乳腺症と漢方.jpg乳腺症とは乳房にしこりが出来る病気です。乳房のしこりというと乳がんが思い浮かびますが、乳腺症の場合は痛みを伴うことがあるのに対し、乳がんはまず痛みがないこと、乳腺症は生理がくると痛みや腫れが軽減するケースが多いことなどに違いがあります。
とはいえ、しこりを見つけたら病院での検査を必ず受けましょう。乳腺症の方がはるかに頻度が高いので、しこりが見つかったからと言って過度に心配する必要はないと思いますが、やはり乳がんを否定することが重要です。
病院で乳腺症と診断されても、まず薬は出されません。乳がんで無ければ病気とまで言えないためですが、不快感が気なる方も多いのではないでしょうか。
中医学では乳腺症は局部の疾患では無く、身体全体のバランスの崩れから生じる症状と捉えます。その一部だけをみて「特に痛みも強くないし、命にかかわる病気じゃないから…」と安易に考えることなく、身体が発している一つの信号と受け止め、対策を検討するべきと思います。
乳腺症を中医学で考えた場合、もっともその発生原因として疑われるのが「気滞」体質です。「気滞」とは「気」すなわちエネルギーの流れが悪い状態であり、ストレスの蓄積により発生する体質です。その「気滞」体質から、「お血」すなわち血行不良が生じると、乳房部分にしこりが発生すると考えるのです。
このタイプの特徴としては、生理前に腫れや痛みが強くなったり、ストレスが強くある時に症状が悪化するとされます。もちろんイライラなど精神的な不安定さも生じます。
よって改善方法としては「気」の巡りを良くする「加味逍遥散(かみしょうようさん)」などの漢方薬を考えます。しかし「お血」を伴っていることが多いので、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」等の「活血薬」と呼ばれる「血」の流れ改善のお薬との併用が必要な場合も多いでしょう。
また「痰湿」すなわち余分な水分の存在が原因の場合もあります。このケースは「脾」すなわち胃腸系の状態が悪い場合が多く、食べ過ぎ飲み過ぎなどに依り「脾」がダメージを受け、「痰湿」が生じます。その「痰湿」が乳房に達するとしこりが生じると考えるのです。
このタイプでは、やや太めの方が多く、また胸のつかえ感やめまいなどを併発ケースがあります。
改善方法としては、「痰湿」を取り除く作用を持つ「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」や「温胆湯(うんたんとう)」などの使用を検討します。しかし「痰湿」を取り除くためには必ず「気」の巡りを良くする必要があるため、上記の「加味逍遥散」や「冠元顆粒」との併用を考えましょう。
データとしては無いかもしれませんが、乳腺症は不妊とも関係があると感じます。例えば排卵障害につながる高プロラクチン血しょうの方は乳房の張りを訴える方が多いのですが、検査数値に出なくとも乳腺症があれば身体は似たような状況であると考えられます。
繰り返しになりますが、乳腺症は女性の体から発せられた一つのサインです。軽視せずに、漢方的な対処を行うことが大きな病気や不妊につながることを防ぎます。まずは食事の改善からでも良いと思いますので、ぜひ対策を取ってみて下さいね。