痔と漢方.jpg痔の患者数は非常に多く、日本人の三人に一人が痔になったことがあるとも言われています。比較的男性に多いような印象があるかもしれませんが、男女とも同程度の患者数がいるそうです。中国には「十人九痔」という言葉があるそうで、非常にポピュラーな病気の一つと言えるでしょう。
あまり表立って痔の話をすることは少ないと思いますが、誰にでも起こり得る病気ですから恥ずかしがらずに対応をしていくと良いですね。
痔はヒトが二足歩行を始めたころからある病気とのことで、足で歩く動物の宿命と言える部分もあるのかもしれません。命にかかわる疾患ではないため、放置している方も多いとは思いますが、排便毎に苦痛がある場合には生活の質の低下を招きますし、我慢する機会が増えて便秘にもつながりかねません。
また、痔ろう又は穴痔と呼ばれる状態を放置すると、細菌感染などで大きな病気になるケースも考えられます。そして血が出るので痔かと思っていたら大腸がんであったという話もあります。痔を疑っても一度は病院で診察を受けてみましょう。
しかし、痔は生活習慣、体質なども関与しているため、一度良くなっても再発するケースがあります。また手術適応でない軽度の痔の場合には、病院で「様子を見ましょう」と言われるケースも多いのではないでしょうか。このような場合にこそ漢方の服用を考えてみましょう。
さらには、どうしても病院に行きたくない場合、便通の問題も同時に抱え、両方合わせた根本的な治療を望む場合などにも漢方の服用を検討すると良いのではないかと思います。
さて一口に痔と言っても、中医学的には原因は様々であると考えます。その原因に依って対処方法は変わります。よって「痔=この漢方」という図式は当てはまらないことをご理解下さい。
ではもっとも一般的なタイプ別に分類して対策方法を見ていきましょう。
◆実熱タイプ
いわゆる”熱”がこもって、それが原因で痔になっているタイプです。便秘になりやすく、出血は鮮紅で灼熱感を伴うケースが多いでしょう。
暑がりで、口が乾き、口臭がして、食欲旺盛である場合には実熱タイプと思われます。
この場合には、「槐角丸(かいかくがん)」が最も良く効くでしょう。また出血が無い痔核(いぼじ)や痛みに対しては「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」を使う場合もあります。
◆湿熱タイプ
上記のタイプに”湿”すなわち余分な水分が絡んだケースです。便は主に下痢となりますが、便が”熱”で乾燥し、便秘になる場合もあります。どちらかと言えば、いぼ痔になることが多いでしょう。
飲み過ぎ、食べ過ぎの傾向があり、身体が重だるい傾向のある方は湿熱タイプかもしれません。
このタイプには「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」「茵ちん五苓散(いんちんごれいさん)」といった漢方薬が効果的です。しかし止血のためには「槐角丸」を併用するなどした方が良いでしょう。
◆気虚、血虚タイプ
気すなわち身体のエネルギーや、血が不足して痔が生じることもあります。下痢・軟便傾向が多く、出血もダラダラと続く傾向があります。
疲労感が強く、めまいや立ちくらみがあるような方はこのタイプの可能性が大です。
このような時には「きゅう帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」という止血効果の強い漢方薬を服用すると良いでしょう。さらには「帰脾湯(きひとう)」などで、身体の「気」と「血」を十分に補っていけば、痔は次第に良くなっていくはずです。
そして痔がひどい場合には漢方の外用薬も併用しましょう。有名な「紫雲膏(しうんこう)」も良いですが、「セサージ」も痔の痛みと炎症ケアには有効です。ぜひお試しになってみて下さいね。
痔の方はとにかく、食事に気をつけ胃腸に負担をかけないことです。香辛料はもちろん、生ものや油の多い料理も控えめにしましょう。そして長時間の同じ姿勢も痔を作り出す要因となりますから、特にパソコン仕事の方などはこまめに席を立ち、身体を動かすようにしてみましょうね。