尿もれと漢方.jpg尿もれは、医学的には「尿失禁」と呼ばれます。排泄に関する悩みは家族にも伝えずらいため、一人で抱え込んでいる方も多いと思います。
とはいえ、最近は新聞やテレビなどで尿もれについて取り上げられる機会も増えているので、少しずつ医療機関等を受診する方も増えているようです。
尿もれにはいくつかのタイプがありますが、「腹圧性尿失禁」と呼ばれる病態は咳やくしゃみ、運動などにより尿が漏れるとされます。女性に多く、40歳頃から増え始める傾向にあります。骨盤の筋力の低下が理由とされますので、専門の体操で鍛えることが有用とされています。男性でも前立腺の手術後等には増えるとされる病気です。
また「切迫性尿失禁」というタイプは、尿意が突然でトイレが間に合わずに漏らしてしまいます。「過活動膀胱」とも呼ばれ、頻尿を伴うことが多く、高齢者に多い病態です。
その他にもタイプがありますが、対処の方法がある程度確立されているのは以上二種類です。
病院では腹圧性尿失禁には「スピロベント」という薬、切迫性尿失禁の場合には「バップフォー」「ハルナール」等が処方されると思います。ただし「スピロベント」には副作用があり、「バップフォー」や「ハルナール」は効果が出ないことも多いようです。
そもそも尿は人間の生理反応であり、その制御を行うことはかなり難しいのではないでしょうか。薬には体を乾燥させる性質もあるために口の渇きや便秘の副作用も起きやすいとされます。
よって、身体に負担の少ない形で尿もれに対処が可能な漢方薬が選択肢の一つとなってくると思います。
漢方では尿もれの原因をいくつかに分けて考えます。
気虚タイプ
「気」すなわちパワー不足で、”抑え”が効かずに尿もれが起こってしまうと考えます。このタイプの方は疲れやすく、胃腸があまり強くない方が多いでしょう。胃下垂や子宮下垂などが伴うケースもあります。
この場合には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などの「気」を増やすお薬を使います。
水湿タイプ
そもそも体に不要な水が多いタイプです。水が多いとやはり尿も漏れやすくなったり、トイレが近くなったりします。体が重い、下痢をしやすい、むくみがあるなどの症状を伴うことが多いでしょう。
このタイプには「五苓散(ごれいさん)」や「猪苓湯(ちょれいとう)」などが合うとされます。
腎虚タイプ
「腎」すなわち生殖力・生命力の低下が原因のケースです。尿もれは高齢者に多いという現実は、この「腎虚」との関係を示唆します。「腎」は膀胱とも関係しますが、その機能低下で”制御”が難しくなり、尿もれが起きると考えます。特に「腎陽虚」と呼ばれる冷えタイプの方に起きやすいでしょう。
具体的には「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」といった「腎」を温める(陽を補う)お薬が使用されます。
これらのタイプ以外の場合も、これらが重なっている場合もあり、漢方的な最終判断は専門科に任せるのが無難です。どうしても相談しにくい内容かもしれませんが、ずっと悩んで生活するよりも、身体全体のケアにもつながる漢方薬をぜひ試してみましょう。