コレステロールと漢方.jpg健康診断の血液検査で引っかかりやすい項目の一つであるコレステロール。ご存じのとおり、コレステロールでも特に悪玉と呼ばれているLDHが高いと、動脈硬化を起こしやすいとされ、それが脳出血や心筋梗塞などにつながるとされています。
少し話はそれますが、この基準値をいまだに性別や年齢を加味しないで機械的に「H」などと表示するのはどうかと感じます。”基準値外”とされると気になるのは当たり前ですし、医師も詳しく調べなければならなくなります。高校生の元気な男子と、高齢で寝たきりのおばあちゃんでは、その値の意味するものが全然違います。基準の数値は統計学的なものであり、基準外=病気の疑いでは決してないこととともに、コレステロールに限らず、血圧なども基準を正確に設定して欲しいものです。このようなことも医療費削減につながるはずです。
さてそのコレステロールですが、人間の体を作っている細胞の膜の構成成分です。そして、消化吸収を助ける胆汁酸、ビタミン、女性ホルモンや男性ホルモンの産生にも関係しています。すなわち生体において必須の成分であることは覚えておきましょう。よって、コレステロールが少ないと、胃腸を壊したり、不妊になったり、元気がなくなるなどの不都合が出てくると考えられます。ちなみに低コレステロールとうつ病の関係も指摘されているそうです。
私は個人的に疫学調査と言われる統計資料がいまいち信用できないのですが(なぜなら一つの値を基準としてもその他の生活背景は皆違うため)、総コレステロール値が240より高いと、動脈硬化の危険度が高まると言われています。現に1980年代までは日本での基準値は240でした。しかし、なぜかそのころに動脈硬化学会が220に下げることを提案したために変更され、今では「値を変えると混乱が起きる」という理不尽な理由で上限値が据え置かれているそうです。
ただ、段々とLDL値に主眼がおかれるようになり、LDLが120以下、LDL/HDL比が5以下であることが重要視されるようになってきています。
ということで、私はコレステロール値をあまり気にする必要はないという立場です。特にスタチン製剤等の薬の服用はリスクが相当高い方以外は必要ないのではないでしょうか。
とはいえ、心臓疾患のある方はコレステロール摂取に気を配ったほうが良いことは間違いなく、また、検査数値に関わらず、どなたでも過剰摂取とならないように食事に気を付けたほうが良いことは当然です。一つだけ、コレステロール検査の利点を挙げれば、数値が悪いと食事を気にするようになるということでしょうね。
さて、漢方的にコレステロールを下げたい場合にはどうすればよいでしょうか。コレステロールは血液中の不要物ですから、中医学的には「痰湿(たんしつ)」が存在していると考えます。また、当然血流も悪くなりますから、「お血」状態である可能性も高いと思われます。
よって、これらの体質を改善する漢方を服用することによって、コレステロールを下げることも十分可能でしょう。具体的には、「痰湿」対処には「温胆湯(うんたんとう)」、「お血」には「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などを考えます。
動物実験ではありますが、「冠元顆粒」は高コレステロールのラットにおいて、動脈硬化の抑制効果が認められています。
しかし単純にコレステロールを下げたいから上記のお薬を使うのではなく、漢方的な見立てをしっかりと行って、食生活や生活習慣も合わせて見直していくことが大切です。そういう意味では「コレステロールを下げる漢方」は存在しないのです。ぜひ自分の体質に合った漢方薬を探して、結果的にコレステロールが健康的に下がるように、お体のケアをしてみて下さいね。