サルコペニアと漢方.jpg最近聞くようになったサルコペニアという病態。加齢に伴う筋力の低下を指す言葉です。ただサルコペニアは1989年にヨーロッパの医師が提唱した概念で、その用語の定義もいまだあいまいな状況のようです。
とはいえ、今まで「老化」とひとくくりで片づけられていた現象に用語を付け、対策を考えていくということは、要介護者を出来る限り減らしていくための一つの取り組みとしても有意義ではないでしょうか。
ちなみにロコモティブシンドロームは運動機能の衰えを指し、日本整形外科学会が中心に提唱している概念で、広義にはサルコペニアも含むと考えても良いと思います。
さらにフレイルと呼ばれる環境ストレスによる抵抗力低下という用語もあり、これもサルコペニアを含むと考えます。カタカナ語ばかりでややこしいですが、分かりやすく云えばすべて「老化現象」なのですよね。
基本的に医学的にサルコペニアに対して出来る治療法、薬はないとされます。よって学会では、運動や食事の指導を通してサルコペニア対策をという考え方を取っているようです。なお、サルコペニア肥満という状態もあり、衰えた筋肉が脂肪として蓄えら、体重は減らないどころか増えてしまうという現象も問題視されているとのことです。
さて、このような老化対策こそ漢方の得意とするところです。なぜなら漢方は「抗老防衰」をテーマとして研究されてきた歴史があるからです。もちろん不老不死は望めませんが、長年研究されてきた漢方の知恵を医学界の先生方はぜひ取り入れて欲しいものです。
具体的にはサルコペニアという筋力の衰えは中医学で云う「腎虚」に他なりませんので、「補腎薬」に位置する漢方薬の使用でかなり予防できると考えます。例えば「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」などです。
とは言え、胃腸の吸収力の低下によって「気血」が不足し、筋に栄養が行きわたらずに筋力ダウンが起こるケースもあるでしょうし、一概にサルコペニアに対して「補腎薬」が適するとは言えない側面もあります。やはりその方の体質を見極める、弁証論治が大切となります。老化は自然な成り行きで致し方ありませんが、その老化を緩やかにしてくれる可能性を漢方は持っていると考えます。
サルコペニア対策を考えることは、最近厚生労働省が平均寿命だけでなく、健康寿命を伸ばすことを提唱していることとも一致します。やはり「健康で長生き」が一番です。漢方の長年にわたる素晴らしい智恵を使って、楽しく体を動かすことのできる老後を迎えたいものですね。
(参考;一般社団法人日本老年医学会HP)