加齢黄斑変性は、高齢者の網膜の黄斑部位に起こる異常により、視力低下や視野内のゆがみや暗点などが生じる病気です。50歳以上に見られ、男性に多く、主要な失明原因疾患です。欧米に多い病気でしたが、最近は日本においても増えている疾患とされます。
加齢黄斑変性にはタイプがあり、滲出型と萎縮型に分かれます。滲出型は異常な血管から血液成分が漏出することで、網膜に影響を与えるタイプで、薬物療法やレーザー治療、手術などの対処方法が取られますが、完全に治療できるとは言い切れません。
そして萎縮型は新生血管が関与せず、徐々に細胞や正常毛細血管の委縮が起きるタイプであり、こちらは治療方法がないとされます。
このように西洋医学的な治療方法に限界がある現状においては、漢方薬の活用を検討していってもよいのではないでしょうか。
では加齢黄斑変性の漢方的な対処方法を見ていきましょう。まず加齢に伴い生じる病気ということから「腎」の問題が考えられます。
「腎」は生命力と関係した臓であり、年齢とともに衰えるとされます。この衰えが急激であることが加齢黄斑変性の原因の一つになっていると考えられます。
また、加齢黄斑変性は血管の異常が伴う病態であるため、「お血」と呼ばれる血行不良状態との関係もあると考えます。喫煙者は加齢黄斑変性発病の危険性が高いというデータもあるそうですが、喫煙は「お血」を招くことから、加齢黄斑変性と「お血」の関連も示唆されます。
さらには眼は「肝」との関係が深いことから、「肝」のバランスの乱れも一因の可能性が考えられます。
以上より、「腎」を補う作用を持つ漢方薬を中心に、「お血」対策や「肝」のケアも考慮した対処方法が加齢黄斑変性対策に有効であると思われます。具体的には「補腎」の作用を持ち、「肝」のケアにも有効な「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」と、血液サラサラ効果を持つ「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などがおススメとなります。
なお、抗酸化物質やビタミン、亜鉛のサプリメントが加齢黄斑変性の進行を防ぐというデータがあるそうです。これらは「腎」のケアと関係しているのかもしれません。
加齢に伴う病気というものは嫌なものですが、目を背けてばかりではいけません。漢方にはアンチエイジングを追求してきた歴史があります。ぜひ漢方の考えを用いての加齢黄斑変性対策を検討してみて下さい。
≪参考図書;今日の治療指針(医学書院)≫