体のどの場所の痛みもイヤなものですが、胃の痛みは苦しいものです。痛みの中で、もっとも多いのは頭痛もしくは生理痛だと思いますが、その次が腹痛もしくは胃痛ではないでしょうか。それほど起きやすい症状でもありますが、食事に関わる部分であるため、生活の質に大きく影響します。
私自身若い頃は「胃が痛いとか胃がもたれると言うけれど、なぜ胃の場所が分かるのだろう」と不思議でした。しかしいつの日だったか、腹痛とは異なる場所でキリキリとした痛みを経験し、「これが胃痛か!」とようやく気付かされました。経験してみないと分からないものですね。
さて胃痛に対しては、たくさんの市販薬があり、病院に行かずに対応している方が多いのではないでしょうか。「ガスター」は以前は病院でしか処方できなかった薬であり、効果も高いと言えそうです。また「ブスコパン」や「スクラルファート」など昔から良く使われている薬もあります。
そして胃痛と言えば「太田胃散」が有名ですよね。桂皮、茴香、陳皮などの生薬が配合されていますが、日本漢方の理論から作られた成分構成であるうえ、化学的な制酸剤も含まれていて厳密な漢方薬ではありません。
もう一つ「武田漢方胃腸薬」も使用している方が多いようです。こちらは「安中散」と「芍薬甘草湯」という二種類の漢方処方を合わせた商品であり、漢方薬です。
ちなみに一般的に痛み止めと言えば「ロキソニン」が有名ですが、胃を刺激する作用がある薬であり、痛みを一時的に和らげる可能性はあったとしても、飲んではいけません。
胃痛は繰り返し生じることが多いものですから、ガスターなどで一時的に対応していても根本解決にはなりません。痛みが生じるということは体からのSOSであり、その根本原因から治していくことが肝要であると思います。その際に漢方薬は役立つのではないでしょうか。具体的に、中医学(中国漢方)の理論で胃痛を考えた場合、大きく分けて以下の3つのタイプに分けられます。

1)急に冷えが入ったことによる痛み

手でお腹を温めると痛みが和らぐ場合は冷えによる痛みであり、「安中散」を用います。生ものや冷たいものを食べたり、クーラーにあたったり、夜中にお腹を冷やすなどして起きることが多く、一過性です。
2)ストレスによる痛み
ストレスで「気」の流れが滞り、キリキリとした痛みを生じます。「開気丸」「逍遥丸」「四逆散」などの処方を用います。慢性的に経過することもあります。

3)胃腸虚弱による痛み

胃腸の力不足によって「気」が不足し、「寒」が生じることでシクシクとした痛みが起きます。この場合もお腹をおさえると気持ちが良く、食後は痛みが和らぐ傾向にあります。基本的にはこのタイプの方は、食欲がおちやすく、疲労感を感じます。漢方薬としては「人参湯」「六君子湯」「補中益気湯」「半夏瀉心湯」などが使用され、やや長期的な視点で、胃腸の強化を行うことが大切です。
いずれにしても、様々な状況を考えて最適な漢方薬を選択することが必要です。胃痛を軽視せず、漢方薬による体質改善を検討してみて下さいね。