拒食症は死に至ることもある、深刻に考えなければならない病態です。医学的には神経性無食欲症と呼ばれるそうですが、まずは決して侮ることのできない病気であることを、周りの方も含め、認識していくべきと考えます。体重40kgに満たない場合は病院の受診を考えましょう。とはいえ、あまり怖がってしまうと悩んでいる当人も周りの人も精神的に負担となります。よく言われることですが、正しく怖れることが大事なのだと思います。

まず拒食症のきっかけですが、ダイエットであることが多いとされます。太ることに対して過度の恐怖感が芽生え、食べることが出来なくなります。もしくは食べることに嫌悪感を覚え、食べてしまったあとで吐くことを考えます。
ちなみに人間が生命を維持するために必要なカロリーは約1200kcal(若い女性の平均)。ご飯一杯200kcalと言われますから、逆にこれ以上食べなければ体重も大きく増えませんし、運動や仕事でカロリーを消費した場合はもっと食べても大丈夫です。

しかしながら、拒食症の場合はダイエットは発症のきっかけに過ぎず、根底の要因として、生まれ持ったコンプレックス、自己肯定感の不足、人間関係などのストレスなどが存在していることも多いようです。その外的なストレスや環境などの要因を改善出来れば一番なのですが、それが難しい場合には漢方薬の出番がありそうです。

具体的には、まずは胃腸への負担を減らすために、消化を助ける「山ざし」「麦芽」「神麹」の「三仙」と呼ばれる生薬を炒った「焦三仙」があると良いと考えます。「焦三仙」は消化を助けるため、服用するとお腹が空いて食べ過ぎてかえって太ってしまいそう、と感じる方が多いのですがそんなことはありません。太りすぎの方は胃腸が疲れているケースも多く、そのような時に「焦三仙」を服用することで、消化しきれなかったものが体に溜まることを防いでくれます。
また基本的に拒食症の方は自分に自信がありません。それは「心」の「気血」が不足している時に生じやすい、体から引き起こされるいわば自然な感情です。その場合には「心」の「気血」を育む「心脾顆粒(しんぴかりゅう)」などを服用することで、自信が少しずつ湧き上がってくるはず。それが拒食症の改善につながっていきます。
とは言え、心の病はカウンセリングが最も大切です。体質を見極めるためにもまずは漢方の専門家に相談し、自分の状態を診立ててもらいましょう。

上手に食事を摂ることが美しくなるための第一歩。食べたものが皮膚になり髪になり、心の栄養にもなるのです。漢方薬で体を整えることで、食べることが楽しくなってきたらしめたもの。無理なく、心身ともキレイな体を目指していきましょう。

≪参考文献:今日の治療指針(医学書院)≫