白衣高血圧は、自宅で測定すると135以下の正常な血圧数値にもかかわらず、白衣を着ている医師や看護師による血圧測定では140以上の血圧を認める病態です。医学の書籍にも掲載されている、良く知られた現象であり、珍しいことではありません。緊張に依る自律神経の乱れが原因であると考えられ、男性よりも女性、若年層よりも高齢者の方が多いとされます。

白衣高血圧は一時的な血圧の上昇であり、大きな問題はないと考えられていました。しかし近年は、診察室でも正常な数値の方に比べ、白衣高血圧の方は持続的な高血圧になりやすい傾向があるというデータが出てきており、高血圧予備軍として考えた方が良いとされます。よって持病がある方は投薬も検討されます。
しかし持病が無い場合は経過観察となり、不安になる方も多いのではないでしょうか。その場合には漢方薬での対応も検討頂くと良いと思います。

さて中医学で白衣高血圧の症状を考えると、「肝陽上亢」によって発生した病態であるように感じられます。「肝陽上亢」とは、「肝陽」が上方に亢進した状態であって、「肝陰」の不足が原因と考えます。「陽」のブレーキ役でもある「陰」が足りずに、上昇する性質がある「陽」が昇り、血圧を上げてしまうのです。同時に、顔や目が赤くなる、のぼせる(上半身が暑い)、汗をかく、などの症状を伴うことが多いでしょう。
この「肝陽上亢」を防ぐには、「陰」を補うことが大切です。「補陰」の力を持つ「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」などの適用が考えられます。
一方で白衣高血圧は、病院環境での顕著な不安が原因であることも多いように感じます。日頃から緊張しやすい、不安を感じやすい、夜眠れないことが多い、などの症状がある方です。この場合は「心腎不交(しんじんふこう)」という病態が原因と考え、「天王補心丹(てんのうほしんたん)」などの適用を考えます。

白衣高血圧は過度に心配する必要はありません。しかしながら、やはり何か体のバランスの乱れがあるために起きている現象とも考えられます。そのバランスの乱れが、後々の高血圧になるリスクを高めているとも言えそうです。早めの対策を検討してみましょう。

≪参考文献:今日の治療指針(医学書院)≫
≪参考サイト:慶応義塾大学/健康情報シリーズ/白衣高血圧と仮面高血圧http://www.hcc.keio.ac.jp/ja/health/2017/09/white-coat-hypertension-and-masked-hypertension.html