現在一般的に行われている西洋医学的な検査をすべて終えて何も問題がないのに妊娠できない場合は、”原因不明の不妊症”と診断されます。原因不明の不妊は、ある病院の不妊外来を訪れた患者の約14%にみられたとの統計があり、また1996年にWHOが発表したデータによると、原因不明不妊は11%となっています。
しかし実際には、原因が判定された場合でも、その治療を行う前に妊娠するケースや、逆に治療を行っても妊娠できないケースもあると思われます。また上記データは、超音波や卵管造影など一般検査だけでなく、さらに詳しいホルモン値測定や免疫因子の検査も行ったうえでも原因が分からない人の割合です。さらには不妊の病院を訪れた人の数に対しての割合であることも見落としてはいけません。これらのことを考え合わせれば、完全に不妊の原因が分かることの方がまれであるとも言えるのではないでしょうか。
検査の技術は日々進歩しているとは言え、人間の体は日々変化しているうえ、妊娠のメカニズムも完全には解明できていない現状では、はっきりと不妊の原因を把握することは難しいのです。
実際に薬局で不妊の方と話をしていると「原因が分からない」ということについて、不安感を持っている方がとても多い印象を受けます。確かに私たちは物事を数字などで理論的に説明されると理解しやすく、納得し、安心します。特に学校や社会での教育は○か×かで行われることが多いため、いつのまにか人間の体もすべて理論的に説明がつくと考えがちです。
しかし実際は人間の体の仕組みや病気の原因などは分かっていないことの方が多いくらいなのです。機械とは違い、人間の体は思い通りにはいきません。ましてや生殖という神秘的な現象に関しては、未解明な部分もたくさんあるということをまず理解する必要がありそうです。
とはいえ、西洋医学で原因不明であったとしても、漢方の考え方で不妊の原因を考えていくと「これだろう」と説明がつくことが多々あります。それはいわゆる”体質”の問題であり、漢方の理論では立派な原因となり得るのです。
この考え方を”西洋医学的原因不明”の不妊の方にお話をすると、少し安心されることも多いようです。原因が分からないという不安定な状態より、漢方であっても「これが原因ですよ」と言われた方がまだ気持ちがすっきりするのかもしれませんね。
漢方では原因不明の不妊はまずありません。夫婦のどちらか、または両方に、体のバランスの崩れが潜んでいます。その体質の見極めをしっかりと行い、対策を立てていけば必ず道は開けますよ。
データ参考図書;不妊・不育外来実践ハンドブック(中外医学社)
原因不明の不妊
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