不妊治療で超音波検査は欠かすことのできない技術ですが、その検査の主な目的として、卵胞の大きさを測ることと共に子宮内膜の厚さを見る、という点があります。子宮内膜は受精卵が着床する大事な部位です。その厚さを測定し、10mm以上あると良好と判断されます。体外受精をして受精卵を戻す際に8mm以上ないと戻さないと決めている病院もあるようです。
確かに子宮内膜はある程度の厚さがあった方が良いと思いますが、はたして厚みだけで判断しても良いのでしょうか。子宮内膜が赤ちゃんを迎え入れるベットだと考えると、いくら厚さがあったとしても質が悪く堅いベットであれば、そこにもぐりこむ気にはなりません。逆に薄くともふかふかベットであれば、入りたくなるかもしれませんよね。よってその質が大切だと感じます。
さてその子宮内膜を厚くするホルモンはエストロゲンであり、このホルモンの分泌は原則として卵子の成長と比例関係にあります。よって、卵子の成長が順調な周期には良い子宮内膜が形成されるはずです。
ですから、「子宮内膜が薄い」と病院で言われたとしても、その周期がたまたまそうだった可能性もあることは覚えておくといいと思います。良い卵胞が育てば、きっと良い子宮内膜が出来上がります。
逆にいえば、むやみにエストロゲン製剤を飲んで、形だけ子宮内膜を厚くしても妊娠の可能性は高まらないと考えます。そしてクロミッドには子宮内膜を薄くする副作用があることも忘れてはいけません。
ちなみに子宮内膜が剥がれ落ちるのが生理ですから、生理の量が少なかったり、塊が多い場合にはその状態もあまり良いとは言えないでしょう。
まずはこのような点を踏まえながら、慢性的に子宮内膜が薄いという方や、クロミッドを使った周期で体外受精で新鮮胚を戻すことを考えている方などは、漢方薬の服用を検討していくと良いでしょう。西洋医学で単純に対策を立てるより、厚さばかりでなく質の向上も期待できると思いますよ。
一般的に子宮内膜が薄い場合には、漢方的には大きく分けて二つの体質が原因と考えます。一つ目は「血虚(けっきょ)」二つ目は「お血(おけつ)」です。
「血虚」とはいわゆる「血」が不足している状態です。子宮内膜は「血」から出来上がっていますから、その不足は厚さに大きな影響を与えてしまいます。よって「血」を補う漢方である「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」などが、その対策に使用されます。
もう一つの「お血」は「血」の巡りが悪い状態です。子宮内膜には絶えず新鮮な血液が流れ込み、ホルモンを運んでいます。その流れが悪ければ子宮内膜も薄くなってしまうことは必然でしょう。その改善方法としては「血」の巡りを良くする漢方「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などが使われます。
この二つの体質を優先的に考慮しながらも、その方の年齢を含めた体の状態を見極めて服用する漢方薬を決めていきます。特に40歳代の方などは、「腎虚」(生殖力の低下)体質も考えながら検討すると良いでしょう。
以上のように子宮内膜の厚さを決める要素は主に「血」の状態です。「血」を増やすためには、貧血に良いとされている食材(レバーや鶏肉、赤身の魚、ほうれん草や小松菜、ドライフルーツなど)を十分に摂り、「血」の巡りを良くするために、適度な運動を行い、血液サラサラに良いとされる食材(青魚、酢のもの、海藻、ネギ類など)を豊富に摂っていくことが重要です。
ぜひこういった生活養生にも気を配りながら、漢方薬を服用して、良い子宮内膜を作り出しましょうね!
子宮内膜が薄い時の漢方
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