不妊対策としての使用頻度が高く、その実績に優れた漢方薬である「婦宝当帰膠」。甘味のある液体で、飲みやすい点も人気の理由でしょう。一方で名前の似た「当帰芍薬散」。こちらは病院で処方されることが多い漢方薬で、婦人科疾患には幅広く用いられ、不妊対策としてお勧めする医師も多いようです。
どちらも不妊に使われる漢方薬であり、名前も似ていますが、処方名が異なれば当然内容も異なり、効能も同じではありません。どうしても似たイメージがある二つの漢方薬ですから、その違いについての質問も多いので、今回はその比較をしてみたいと思います。
まず「当帰芍薬散」は、教科書では「和解剤」に分類されています。「和解剤」とは、臓の”不仲”を改善する作用をもつ方剤で、上手く機能がかみ合っていない臓腑を調和させる役割を持ちます。「当帰芍薬散」は「肝」と「脾」の調和が目的の処方であり、ストレス等によって乱れた「肝」と、胃腸系である「脾」の仲を取り持つ作用があります。よって、自律神経系が乱れて、胃腸の働きが悪くなっているような時に使用され、どちらかというと成分的にも胃腸の働きを整える生薬が多く配合されています。
しかし「補血」作用もありますので、婦人科系にも使われ、生理不順や生理痛にも有効と言えます。
一方で「婦宝当帰膠」は教科書での分類はありませんが、「当帰」が7割を占める処方である点が大きなポイントです。「当帰」と言う生薬は「補血薬」として分類されます。よって「婦宝当帰膠」は「補血剤」と言ってもよいでしょう。
すなわち「婦宝当帰膠」は「血」を補う作用に優れた漢方薬と捉えます。そして「当帰」には活血と呼ばれる、「血」の流れを改善する作用があるため、「婦宝当帰膠」も血流を改善する作用もあると考えられます。
言うなれば「婦宝当帰膠」は「血」を豊富に、キレイにする漢方薬。赤ちゃんを育むためのポイントは「血」が良い状態であること。よって「婦宝当帰膠」は不妊に有効とされるのです。
まとめてみますと以下のようになります。
補血の力は「婦宝当帰膠」の方が断然強く、結果として不妊に対しても力がある
血行を改善する力も「婦宝当帰膠」の方が強い
胃腸系が弱い方は「当帰芍薬散」が合い、ストレス対策にもなるが、穏やかな処方
このように二つのお薬は似た面もありますが、やはり別物。しっかりとその点を理解して服用をしていくべきであり、その判断は漢方の専門家と相談をして決めましょう。