不妊対策に使われる漢方薬は一般的に婦人科系に使われる処方が多くなっています。具体的には「婦宝当帰膠」「当帰芍薬散」「温経湯」「桂枝茯苓丸」などが挙げられ、これらはオーソドックスな「不妊の漢方」と言えるかもしれません。

一方で、今回取り上げる「杞菊地黄丸」は主に疲れ目やかすみ目など、目の不調に使われるお薬です。「飲む目薬」とも言われる「杞菊地黄丸」ですが、なぜこの漢方が不妊対策として使われることが多いのか、解説していきたいと思います。

まず、妊娠しやすい体作りのためには、二つの大きな要素があると私は考えています。
一つ目は「血」の要素。子宮と卵巣の機能が上手く働いていることが妊娠には大切ですが、その二つの臓器に「血」は非常に大きな影響を与えます。「血」が豊富でスムーズな流れを保っていることが重要です。
そしてもう一つは「腎」の要素。「腎」は生殖力、生命力に関係しており、卵の質等に関係してきます。

この二つの要素のうち、「血」に対する漢方薬が、最初に挙げた、いわゆる良く使われる「不妊の漢方」です。基本的に女性の体にとっては「血」がとても大事であり、もちろんこちらが優先される傾向にあります。
しかし「血」が良い状態であったとしても、「腎」がしっかりとしていないと、やはり妊娠は難しくなってきます。特に「腎」は加齢とともに衰えるため、30代後半から40代の方は必ず意識したい要素となります。

その「腎」を補う代表的な漢方薬が「六味丸(六味地黄丸)」です。「腎」を強化し、生命力、生殖力を高める基本処方となります。
そして、「六味丸」をベースとして、「枸杞子」「菊花」を加えた漢方薬が「杞菊地黄丸」。この「枸杞子」と「菊花」は目に良い生薬なのですが、五臓の「肝」に効きます。「肝」は生理と密接に関係するなど女性にとって非常に大切な臓であることから、「腎」をメインとしながら「肝」のケアも出来る「杞菊地黄丸」は優れた不妊対策の漢方薬となるのです。

なお「杞菊地黄丸」は「腎」の「陰」を補うお薬であることから、「陰」の時期である低温期を中心に服用することで、卵の質のアップを期待することが出来ます。

このように、不妊対策を漢方で考える場合、王道として「血」の状態を高めることを優先しますが、そればかりでなく「腎」のフォローをすることが妊娠への近道となります。その際に役立つ漢方薬が「杞菊地黄丸」なのです。
ちなみに「腎」を補う基本処方が「杞菊地黄丸」ではありますが、さらに「腎」を強化したい場合には「星火亀鹿仙」などを合わせることも一考です。

もちろん「杞菊地黄丸」が合わないケースもあるため、体質判断が必要ではありますが、
☆なかなか妊娠に到らないケース
☆もともと体が弱い方
☆30代後半から40代の方
☆卵の質がどうしても良くない方
などは、ぜひ「杞菊地黄丸」の服用をご検討ください。