最近よく目にする言葉である「フローラ」。何か温かくて、柔らかいようなイメージと思い、調べてみたらローマ神話の女神のお名前とのこと。しかし今回取り上げる「フローラ」は、ラテン語であり、細菌叢(さいきんそう)を表す言葉です。
近頃は腸内フローラと呼ばれる、消化器官の細菌叢が人体の生命維持に非常に大きな役割を持つとして注目されています。なんと腸内細菌は約800種類、100兆個も住んでいて、その遺伝子は人間本体がもつ2万2千と比較し、数百万にも及ぶそうです。この腸内フローラが人間の健康に影響を与えている可能性が指摘されています。

一方で不妊と関係あるのではないかと、子宮内のフローラを検査する病院が増えてきました。腸内と同様に子宮内にもフローラがあり、特に「ラクトバチルス」という細菌が着床や妊娠維持に重要な役割を担っているという報告があります。また、その減少はカンジダ膣炎などの病気を引き起こしやすくなるともされます。
病院では、その子宮内フローラ改善のために、抗生物質を使ったり、サプリメントを使用することを推奨するようです。しかし抗生物質は、良い菌を殺すことにもなり、子宮内フローラ環境の改善にはつながりにくいのではないかと考えられます。また腸内フローラへの影響から結果的に免疫力低下や炎症悪化にもつながる可能性があり、そのような抗生物質の使い方には抵抗を覚えます。

もちろんサプリメントで狙った菌を増やすことも一考ですが、前述したようにフローラはたくさんの種類の菌から構成されている複雑なものです。また現状では確実にフローラ改善をもたらすサプリメントが存在するわけではありません。よって、漢方的な考え方から、子宮内フローラの改善を考えてみても良いのではないでしょうか。

その際に大切なのは、腸内と同様に、子宮内の粘膜を強化すること。良い粘膜を保つことが細菌が良い働きをする土台作りになるのです。そのための漢方薬と言えば「星火健脾散(せいかけんぴさん)」。胃腸系のお薬ではありますが、体内の潤いを補い、力を高め、粘膜強化につながると考えられます。この力が子宮粘膜にも作用すると、一言で言えば子宮環境が良くなると考えています。

もちろん、それもケースバイケース。もっとも大切なのは、バランスのとれた食事になりますし、不要物(悪影響をもたらす細菌を含む)が体に蓄積している場合には、まずその除去が必要です。中医学で云う「弁証論治」は漢方薬を服用する上での絶対的な基本になりますので、まずは専門家による体質判断を仰ぐために、相談をしてみましょう。

正解が無いとも言える不妊治療。子宮内フローラという、また新たな考え方が出てきましたが、これもまた簡単に変えられるものではありません。一時的なものではなく、良い子宮内環境をキープするためにも、漢方薬の服用を検討してみましょう。