精神疾患と一口に言っても、様々な病態があります。うつ、燥、双極性障害、パニック障害、解離性障害、摂食障害、自閉スペクトラム…これらの病名がつかなくとも心の不調を感じている方は多いように思われます。日本人は精神疾患が病気であるという認識が強くないためでしょうか、精神科の受診をためらう傾向にあり、自殺率は高い方であるにも関わらず、統計的に精神病患者の数自体は少ないそうです。「隠れ精神疾患」の方が多いことは想像に難くありません。

さて、妊活において重要なのが、心と体の健康です。体については、婦人科など不妊治療の病院に行き、積極的に治療をしたり対策を考えている方が多いですが、心の対策については消極的であるように感じられます。精神疾患は精神力で何とかなる、気持ちの問題ではありません。
当店に不妊相談にお越しの方も、心が絶好調である方は皆無です。精神疾患とまではいかなくとも、心のケアは妊活につきものであることは必ず頭に入れておきましょうね。

中医学の理論において女性の生理は「肝」に深く関わっている考えます。「肝」は体の中の流れを担当する臓であり、「肝」が不調であると生理不順など婦人科系疾患を生じるケースがあるとし、不妊にもつながります。そしてこの「肝」は精神面と関係する臓ともされます。体の中の「気」の流れが悪くなると、気持ちも不安定になるのです。すなわち、「肝」のケアが精神疾患対策になることが多いのですね。
よって、「肝」を伸びやかに活動させ、「気」の流れを改善する「逍遥散」などは、精神疾患対策になりながら、妊活にも良い漢方薬となるのです。
また「肝」は「血」を蔵している臓であり、「血」の不足も「肝」の不調につながり、ひいては精神疾患の原因になる場合があります。また、この「血」不足も不妊の要因になりやすいとされます。「血」は子宮や卵巣にとって大切な栄養源であるためです。よって「補血」の力を持つ漢方薬は、精神疾患にも良い場合があるのですが、婦人科系にも有用となります。

もちろん、精神疾患が重い場合にはまずは病院の治療を優先します。しかし、抗うつ薬や抗不安薬の中には妊娠を考えている時には服用を控えた方が良いものがあり、また問題ないとされるお薬であっても妊活中の服用に抵抗がある方は多いように思います。その場合は漢方薬の出番です。漢方の対処は以前にHPコラムにいくつかの精神疾患別に書いたように、症状に合わせて漢方薬を選択していきます。上記のようにその対策が妊活にもつながれば一石二鳥ですね。

ちなみにこの記事は主に女性の心と体の視線で書きましたが、男性も心のケアを必要とするケースが多々あります。赤ちゃんを望んでいるカップルは、女性も男性も、少しでも精神面での不安、不調がある場合にはぜひ漢方的な対策を検討してみて下さいね。