
「哈士蟆油(はしまゆ)」は長白山麓の原生林に生息する中国林蛙の輸卵管です。長白山は、白頭山とも呼ばれ、中国と北朝鮮の国境付近にある火山で、山麓にはアムールトラなども生息する平原が広がっています。豊かな自然が残っているこの場所で生活している蛙の一種である中国林蛙はエゾアカガエルとも呼ばれます。平均体長は約5センチとのことですから、小さな蛙ですよね。寒い地方のみで育ち、大人の蛙になるまで3~6年かかるそうです。
その中国林蛙の輸卵管が「哈士蟆油」です。輸卵管は、漢字のとおり、卵を運ぶ管で、「哈士蟆油」は水に浸すと数十倍に膨れるという特徴があります。この蛙が生息する、戦前は満州と呼ばれた地域である中国の東北地方では、「哈士蟆油」には寿命を伸ばす効果があるとされ、重宝されてきました。現在では高級デザートとして食されることが多いそうです。小さな蛙の輸卵管ですから、もちろん量は取れません。そのため高価な食材となっているのです。
私も不勉強で、最近まで「哈士蟆油」を知りませんでした。一般的な教科書には掲載されておらず、マイナーな生薬と言えるでしょう。「肺」を潤し、「腎精」を補う作用を持つと定義されます。
私自身も「哈士蟆油」のことを学んだとき、どれほどの効果があるのか、半信半疑でした。主には美容系に使われるともされ、あまりお客様に飲んで頂く機会はないのかな、とも感じていました。
しかし、どこかの講義であったでしょうか、妊活に使って効果があったという話を聞き、試しに私自身で飲んでみたところ、精子の量が明らかに増えたのです。その後、知人に服用いただいたりしても、男性はED対策にも効果を発揮し、女性はオリモノの量が増える傾向があるとの声を多数聞きました。
そして最近、6年ほど第二子不妊で悩んでいた方に使って頂いたところ、妊娠反応が陽性に!正直、私が今まで使ってきた「腎精」を補う薬の中で、もっとも反応が良いです。
ただし中医学は理論があり、その理論を元に薬も使用すべきです。私もまだ手探りですが、基本は体の潤い、すなわち「陰」が足りていない方に合っていると考えています。妊活だけでなく、皮膚の乾燥や乾燥性の咳などにも良いのではないか、とも考えています。これから「哈士蟆油」の力でもっともっと喜びの声が聞けるのではないかと、期待しています。
私も最初は疑っていた「哈士蟆油」の力ですが、長年にわたって残っている生薬で、高価であっても買う人が絶えないということは、やはりそれなりの理由があるのですね。ただし、貴重な動物から作られるだけあって、この力が多くの人に知れわたったら大変なことになるのでは…とも感じます。動物の命を頂いていることに思いをはせつつ、ありがたく飲んでいただくと良いのではないかと思っています。