「皮脂欠乏性湿疹」は、皮膚が乾燥してかさついてしまう「乾皮症」の状態に加えて、かゆみなどを伴う湿疹が発生した病態を指します。皮膚表面の角層水分量が低下してしまうことが主な要因です。簡単に言えば、乾燥肌にプラスして、湿疹が出来てしまった状態ですね。

加齢は、皮膚の脂分の低下を招くため、「皮脂欠乏性湿疹」の主な原因となります。高齢者の足に生じることが多い湿疹の多くは、この「皮脂欠乏性湿疹」であるとも言われるそうです。かゆみを感じることが多く、かいてしまうことで、さらに湿疹が悪化してしまうことも多々あります。
皮膚科に行くと、「ヒルドイド軟膏」が処方されることが多いようです。「ヒルドイド軟膏」はいわゆる保湿剤であり、皮膚表面のケアに役立ちますが、根本的に体の内側から改善するお薬ではありません。また、湿疹が生じているときは、ステロイド外用薬併用が勧められます。湿疹であれば、炎症が生じているため、その炎症を鎮めることがかゆみ対策にもなるため、状態がひどい場合には使用すべきでしょう。
しかしながら、前述したように加齢や体質などが「皮脂欠乏性湿疹」の根本原因であれば、その対策を行わなければ、症状を繰り返してしまいます。中医学的な対処方法を取り入れて体の内側から対策を取っていくことは、湿疹だけでなく体全体のケアにもつながります。

さて「皮脂欠乏性湿疹」の中医学的な根本原因は、やはり乾燥であり、「津液不足」と呼ばれる状態です。さらに潤い不足が奥まで進むと「陰虚」と云う病態となります。「陰虚」である場合、「熱」が発生しますので、のどの渇きやほてり、のぼせなどの症状と合わせ、炎症の原因の一つになると考えられます。
よって、まず湿疹がひどい時には、「熱」を除きながら潤いを補うことも出来る「清営顆粒(せいえいかりゅう)」などの漢方薬を使用していきます。そして湿疹が落ち着いたら、「紅沙棘(ほんさーじ)」「八仙丸(はっせんがん)」などの潤いをもたらす漢方で、根本解決を図っていくことが理想です。
しかしながら、皮膚の状態を見極め、他の症状からの体質判断も加えて、服用する漢方薬を選択することが第一です。上記の漢方薬はあくまでも一つの例となりますので、実際に試されるときは漢方の専門家に必ず相談しましょう。

なお「皮脂欠乏性湿疹」は、生活習慣の見直しが、その症状軽減に役立ちます。過度の暖房、入浴時の石鹸の使い過ぎ、激しい運動(大量の発汗)などは、悪化要因です。逆に漢方で潤いを内側からもたらすとされる、豆腐やヤマイモなどは意識して摂ることが出来ればベストです。また、手に入りにくいですが白きくらげは肌に潤いをもたらすとても良い食材ですよ。一方で香辛料など刺激物、ニンニク、ショウガなどは控えめにしましょう。

「皮脂欠乏性湿疹」はバリア機能の低下によるものとも言えますので、やはり一時的な対策だけでなく、根本からの解決を目指していくべきです。ぜひ中医学的な視点からの対応もご検討ください。

≪参考図書:今日の治療指針(医学書院)≫