血栓性静脈炎は、血液の詰まりが静脈に生じ、炎症が引き起こされる皮膚病です。下肢の発生がほとんどで、いわゆる静脈瘤が一緒にみられることも多い疾患です。深い部分の静脈の血栓が原因として重要とされ、表面の静脈の血栓の場合は静脈瘤として現れることが多いと考えます。
血栓性静脈炎は、血行不良(血液ドロドロ状態)が危険因子です。無症状のケースもあれば、腫れや痛みが伴うことも多いとされ、慢性的に経過すると皮膚のうっ血症状が現れ美容的な側面から気になってきます。

西洋医学的治療では、急性期においては肺栓塞症ケアが重要となり、長期的にはワーファリンすなわち血液を固まりにくくするお薬などを勧められることが多いでしょう。また血流を促すために弾性ストッキングの使用も推奨されます。
しかし、長い期間ワーファリン等を服用することに抵抗がある方も多いことでしょう。また根本的な解決にはならないため、血栓が出来やすい体質があったとすれば、そのままの状態では他の血管に血栓が発生することで大きな病気につながってしまうことも考えられます。このような悩みがある時には、根本から血行を改善する可能性がある漢方薬の服用を検討されてはいかがでしょうか。

さて血栓性静脈炎の漢方的原因は、やはり「お血」です。「お血」は血行不良のことです。「お血」はその特徴として3つの症状「痛み」「黒ずむ」「しこり」があるのですが、そのどれもが血栓性静脈炎で起こりえます。まさに「お血」が原因の典型的な疾患とも言えるでしょう。
「お血」の改善のために使用される処方としては「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」や「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」「田七人参(でんしちにんじん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などがありますので、このような活血薬と呼ばれる漢方薬の中から体質に合わせて服用を選択することで対策が可能と考えます。
もちろん、養生も大切であり、立ち仕事をしている方は出来る限り休息時に足を持ち上げる態勢をとったり、弾性ストッキングの着用、こまめな水分補給、足元を冷やさないことなどに気をつけると良いですね。
とは言え、漢方薬も養生も最適な方法は人それぞれ異なります。必ず最初に漢方の専門家に相談しましょう。

血栓性静脈炎は、下肢に生じることがほとんどで、隠すことが出来るためにあまり気にしていない方もいらっしゃいます。しかし、体が出している警告であるとも考えられます。軽視せずに、対策を考えてみて下さいね。

≪参考資料:今日の治療指針(医学書院)、皮膚疾患の中医医療(東洋学術出版)≫