薬疹は、薬剤が皮膚の病変を引き起こしてしまう病気です。体を治すための薬が、逆に病気を引き起こしてしまうのは皮肉ですが、薬に副作用は付きものであり、メリットデメリットの比較から致し方ないことが多いとも考えられます。
とは言え、重症の場合には臓器にもダメージを与え、死に至ることもある怖い病気です。アレルギー性と非アレルギー性があり、初回投与から発症までは1週間程度であることが多いとされます(実際に症状を引き起こす際は、服用から発症は数時間)。
薬が原因と疑えるかどうかが最初の関門で、薬の服用中止で軽快、もしくは再投与で悪化することで診断します。抗生物質や抗けいれん薬、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬(バファリン、ロキソニン、イブ、セデスなど)、造影剤などが原因薬として知られますので、始めて服用する場合は、1週間から4週間ほどは、経過に注意が必要です。高熱が出て、皮膚に今までに見たことが無いような異常が認められたら、すぐに病院に行きましょう。
なお漢方薬が薬疹の原因となることもあります。
薬疹と診断された場合、その原因薬剤を中止することが何より大切です。軽症であれば、抗アレルギー薬やステロイドで治療します。
薬疹の場合は基本的には病院での治療が主となり、漢方の出番は無さそうですが、現代医学の薬が原因なだけに、その治療に薬を使うことに抵抗を感じる方も多いことでしょう。また、薬疹は1~2週間程度で治ることが多いとされますが、長く続いてしまうケースもあり、その場合は漢方薬の適用も考えられます。さらには、薬疹を繰り返すような場合、その体質を変えるために漢方薬が良いケースもあるでしょう。
中医学で薬疹を考えた場合、薬ではありますが、その方の体にとっては「毒」となり、症状を引き起こしてしまったわけですから、まずは「解毒」を考えます。そして、一般的には赤い湿疹が生じることが多く、この場合は「熱」の関与が疑われます。よって、「解毒」が出来て「熱」を冷ます性質を持つ漢方薬である「黄連解毒湯」や「馬歯けん」などの適用が考えられます。「馬歯けん」は外用としても用いられます。
さらに、薬疹を引き起こす体質に関しては、粘膜が弱い「衛気虚」が第一に考えられます。「衛気虚」は体外からの「毒」に反応してしまいやすい状態です。「衛気虚」改善に使われる漢方薬としては「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」が挙げられます。
薬疹は今の現代医学隆盛の世の中ではゼロには出来ない疾患であるように思われます。このような病気があるということを医師や薬剤師は知っていますが、薬を服用する側も頭に入れておくと良いですね。
≪参考図書:今日の治療薬(医学書院)≫