
中医学にも応用される五行説において、「味」は「甘味」「辛味」「苦味」「酸味」「鹹味」の五つに分かれます。「鹹(かん)」は日頃見慣れない漢字ですが、しょっぱい、塩からいという意味になります。
「鹹味」には「降ろす」作用があり、軟らかくする働きも持つとされます。しこりや腫瘍がある場合には「鹹味」の生薬を用います。
また「鹹味」は五行説で「腎」と同じグループにあたります。「腎」は生命力と関連がある非常に大切な「臓」です。
最近は塩分を毛嫌いする傾向があります。血圧に影響を与えるから、という理屈ですが、上記にも述べたように、人が健康維持のために必要とする味の一つが「鹹味」であり、ある程度の量は摂取すべきです。塩が無いと人間は生きていけません。農耕の時代には塩が貴重であり、山沿いに住む人は海沿いに住む人と、米と塩を交換したと言われていますよね。肉や魚、貝類に一定量の塩分が含まれるとは言え、高齢者はこれらタンパク質摂取も少なくなりがちですし、適度な塩の摂取は必要と考えます。
また、「腎」が未発達の成長期の子どもにも「鹹味」が大切であり、若い年齢では味が濃いものが好きな理由は、ここにあるように感じます。さらには、更年期の女性も「降ろす」作用がある「鹹味」はホットフラッシュ対策に有用であると思われますし、妊活中の男女も「腎」に働きかける「鹹味」を意識すると良いでしょう。
かと言って摂り過ぎも良くありません。古代の書物「黄帝内経」には「鹹味」を食べ過ぎると、血がどろどろになり、血行不良が起き、顔のつやがなくなる、と書かれています。これは中医学で云う「お血」を示していて、高血圧も「お血」が絡んでいますから、やはり血圧が高い場合には過剰の塩分摂取は控えるべきでしょう。
このように健康のために必要不可欠な「鹹味」ですが海藻類や貝類などの海産物で摂取が出来れば理想です。また人工の食卓塩ではなく、天然塩を摂るようにしましょう。







