漢方薬の原料ともなる生薬。この生薬は自然界の植物や動物、鉱物が起源です。しかし生薬はやはり特殊な植物等で、普段私たちが食事で摂ることは無いと考えている方が多いのではないでしょうか。確かに薬として使われている植物は、特別な作用を持っていたり、栽培や採取が難しく貴重な品種であったり、食材としては向かないケースがほとんどです。とは言え、一部の生薬は実はとてもなじみのある食べ物だったりするのですよね。ということで今回は生薬としても使われている食べものを紹介します。

1)スイカ
「西瓜(せいか)」という生薬として知られます。効能は「解暑除煩」「止渇利小便」。すなわち、暑さによる焦燥感や、のどの渇き、尿量減少などに効果があるとされます。
冷ます力に優れていて、「白虎湯」という熱を冷ます処方を例に挙げて、「天生の白虎湯」とも言われる優れた食物であるスイカ。夏バテ対策、熱中症予防に活躍間違いなしの食べ物なのです。
ちなみに二日酔いにも良いとされます。

2)緑豆
そのまま「緑豆(りょくず)」という生薬名で知られます。効能は「消暑止瀉」「清熱解毒」。熱を冷まし、解毒効果に優れます。また体の中の不要な水分(痰湿)を除去するとします。
緑豆は中国では夏には欠かせない食材だそうですが、日本ではあまりみかけないですよね。代わりに、緑豆モヤシ、緑豆はるさめなどが使いやすいですね。

3)緑茶(日本茶)
「茶葉(ちゃよう)」という生薬です。効能は「去風・清爽頭目」「清熱降火・解暑」「解熱毒・止痢」「利水」。熱を冷ます効果を持ち、頭や目をスッキリさせます。
日本人にはとてもなじみのある緑茶は、頭痛やめまい、目の充血などにも用いられる生薬なのです。

4)ゆり根
ユリの根は「百合(びゃくごう)」という生薬です。「潤肺止咳」「清心安神」の効能を持ちます。
「肺」を潤し、咳を止め、心を鎮める作用ですね。
空咳などに良く、乾燥した秋にピッタリの食材です。

5)レンコン
ハスの地下茎であるレンコンは部位により生薬名が異なりますが、食用とする部分は主に「蓮心(れんしん)」という生薬に相当します。効能は「清心瀉火・安神」。心を冷まし、気持ちを落ち着かせます。
よって不眠などにも用いられますが、体を潤すため「肺」にも良く、咳対策にもなる食材です。

今回取り上げた食材は基本的に冷やす性質を持ちます。よって夏から秋にかけてはピッタリの食材です。季節の養生として活用したいですね。しかしながら、冷え性の方が摂りすぎると良くない面もありますので、適度に摂ることが大切ですよ。

≪参考図書:中医臨床のための中薬学(医歯薬出版株式会社)≫