生薬として使われる食品の紹介、最後は平性、すなわち寒熱の偏りが無い食品です。

1)ヤマイモ
ヤマイモは「山薬(さんやく)」という生薬として知られます。「山薬」の効能は「補脾止瀉」「養陰扶脾」「補腎固精」などです。胃腸機能を回復させ、「陰」すなわち体の潤いを補う作用ですね。
「山薬」は様々な処方に含まれる、中医学における重要な生薬の一つ。それほど力がある生薬ということです。
市販のヤマイモに生薬と同等の作用は期待できなくとも、よく言われるように滋養強壮に役立つことは中医学のお墨付き。潤いをもたらすということは裏を返せば「湿」がたくさんある方は注意が必要ですが、睡眠不足で、体がほてり気味、疲れやすいという方にはおススメの食材です。

2)小麦
生薬名も「小麦」ですが、コムギではなくショウバクと読みます。「養心安神」作用があります。穏やかに精神を安定させる作用ですね。「甘麦大棗湯」という、不眠や小児の夜泣きなどに使用されることの多い処方に含まれています。
生薬では30gなど、かなり多めの量を煎じて服用します。よって、パンやうどんでその効果はそこまで期待できないかもしれませんが、その作用を覚えておくと良いですね。

3)はちみつ
生薬名「蜂蜜」はホウミツと呼ばれます。「潤腸通便」「清熱・潤肺止咳」「補中・緩急止痛」作用があるとされます。
イメージ通りですが、体に潤いをもたらす食材です。特に咳が出やすい方、便秘気味の方は、はちみつを活用いただくと良いですね。なお、お腹が弱っている時には、食欲不振や倦怠感対策として、火を通して食しましょう。やはり質の良いはちみつの方が、力も強いと感じます。

4)小豆
あずきは「赤小豆(せきしょうず)」と呼ばれる生薬です。「利水消腫」の作用があるため、むくみや尿量が少ない方に合っている食材です。

5)黒豆
黒豆は、その皮が「黒豆衣(こくずい)」と呼ばれ、「益腎平肝」の効能があるとされます。生命力に関係する「腎陰」を養うため、コツコツ食べることで、長生きにつながると考えられます。

平性の食材は、基本的には量を多く摂っても良く、どなたでも長く使用出来て安心です。とは言え、自分の体質にあった食材を積極的に摂ることが本物の「薬膳」。体質判断についてなど分からない点はお気軽に漢方薬局の店頭でお尋ねくださいね。

≪参考図書:中医臨床のための中薬学(医歯薬出版株式会社)≫