甲状腺機能低下症は女性に多く見られる疾患です。以前は高齢の女性に多いとされていましたが、最近では若い女性にもよく見受けられます。成人女性の10人に1人程度は甲状腺機能の低下が認められるとの報告もあり、それほど珍しい病気ではありません。
のどぼとけの下の辺りにある甲状腺からは、代謝速度をコントロールする甲状腺ホルモンが分泌されています。このホルモンが低下した状態が、甲状腺機能低下症です。
よってホルモン分泌が減少すると、身体機能自体が低下することになります。脈が遅くなり、体が冷え、便秘となる場合が多いようです。また、皮膚が乾燥し、話し方もゆっくりとなり、うつ病のような症状を引き起こします。身体の活力が低下した状態ですから、単純に「元気がなくなる」と言えばいいでしょうか。
なお橋本病は甲状腺が炎症を起こした病気であり、悪化すると、甲状腺機能の低下をもたらします。
漢方の考え方から甲状腺機能低下症を見た場合、「気虚」をまず第一に疑います。「気虚」とはエネルギー不足であり、甲状腺機能低下症の各種症状は、まさにこの「気虚」に当てはまるものばかりです。体のエネルギーが足りないから、元気がなくなり、体が冷えて、気持ちもなえてうつ病になり、排便の力も衰えて便秘傾向になります。
また一歩進んで「陽虚(ようきょ)」という体質も考えます。「陽虚」は「気虚」のさらに進んだ状態と考えても良く、甲状腺機能低下症が悪化している場合は「陽虚」である可能性が非常に高くなります。「陽」すなわち、体を温める成分が不足した状態ですから、体が著しく冷えて、代謝が悪くなり、むくみなども引き起こします。
よって、甲状腺機能低下症の方が漢方薬の服用を考える時には、「気」や「陽」を補う処方を選びます。「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「海馬補腎丸(かいばほじんがん)」、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などが選択される場合が多いでしょう。
重篤な甲状腺機能低下症には甲状腺ホルモンの投与が必須ですが、慢性的に経過して体質改善を目指したい場合には、漢方薬が役に立ちます。特に冷えの改善には即効性もありますので、漢方専門の薬局によくご相談のうえ服用を検討されてみて下さい。
甲状腺機能低下症と漢方
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