慢性前立腺炎と漢方.jpg慢性前立腺炎は下腹部の痛みや不快感を呈する疾患です。排尿時の痛みや不快感、射精痛なども伴いやすく生活の質を低下させます。細菌が原因の場合もありますが、非細菌性の前立腺炎も多く、その場合の発症原因はよく分かっていません。もともと前立腺は薬が届きにくい臓器であるため、細菌性であっても薬が効きにくく、症状が慢性化しやすいという特徴があります。さらには良くなったり悪くなったりを繰り返しやすく、完治が難しい疾患でもあります。
慢性前立腺炎は比較的高頻度で起こる疾患でありながら、西洋医学では対処が難しい病気であり、決め手となる治療法がないのが現状です。そこで漢方薬の出番となります。長期間の薬の服用で副作用などが気になる場合、根本的な体質改善を目指したいというような時にも有効でしょう。
慢性前立腺炎を中医学の理論で考えた場合、まず”湿熱”体質を考えます。”湿”は過剰な水分のことであり、”熱”は文字どおり、体の中の余分な”熱”です。前立腺炎は”炎症”ですから”熱”があることは疑う由もありませんし、”湿”についても尿の問題との関係から、体内に存在している可能性が高いと言えるでしょう。
この”湿熱”が体に影響を与えると、特に尿関係の不調につながるとされています。よって、”湿熱”を体外に追い出す処方である「瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかゆう)」や「猪苓湯(ちょれいとう)」が選択されることが多くなるでしょう。
また”お血(おけつ)”体質がある場合も見受けられます。「痛みがあればそこには”お血”がある」という格言通り、慢性的な疼痛が見られれば”お血”の存在を疑います。下半身の「お血」ですから、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などの漢方薬の服用を考えていきます。
さらには”気滞(きたい)”体質が絡んでいる場合もあり、前立腺炎は漢方的にも見てもやや複雑な疾患と言えるでしょう。様々な情報を考え合わせ、体質にもっとも合った漢方薬を選択することが大事となります。またやや長い目で見た治療であると考えた方が良いでしょう。漢方薬局でゆっくりと相談し、納得したうえでお薬の服用を始められるといいですね。