更年期の漢方.jpg更年期障害はホルモンバランスの変化によって引き起こされる様々な症状を指します。頭痛、肩こり、しびれ、のぼせ、動悸、不眠、そしてイライラやうつなどの気持ちの問題も含め、いわゆる不定愁訴と呼ばれる様々な症状が発現します。どの症状が起こるのかは人それぞれで「これも更年期の症状?」と思えるようなものも多数あります。
そもそも更年期は今まで赤ちゃんを育むために動いていた女性の体が”異なる”体に変化をしていく過程で生じるものです。20歳の女性と60歳の女性では、残念なことかもしれませんが、ホルモンの量は全く違います。”別の体”とは言いすぎかもしれませんが、その変化の過程がスムーズでないと体に違和感を感じるのは当然と言えば当然なのです。いかにスマートに順調に移行して第2の人生の体づくりをしていくかが重要となってくるのです。
あまりにもつらい状態であればホルモン剤で治療することも一概に悪いとは言えません。しかし本来ならば自然の流れに沿って体を変化させていくべきです。その手助けをするものとして、漢方は更年期対策のための手段として検討されると良いように感じます。
さて漢方では更年期の症状が起きる主な原因を「腎虚(じんきょ)」と考えます。「腎」とは”生命力”と関係する器官であり、その衰えはすなわち「老化」につながります。この「腎」が豊富で良い状態であれば、更年期障害も起こりにくくなり、スムーズに老いていくことが出来るのです。
しかし「腎」の陰陽のバランスが崩れると様々な症状が起こってしまうと考えます。特に「腎陰」が消耗していしまうことが多く、この場合には「陽」の抑えが外れて、体の上部が熱を帯びやすくなります。これがのぼせとなり、イライラ、頭痛の原因となるのです。
よって急激に変化(減少)してしまった「腎陰」を補うことがバランスを取り戻すために必要となります。そのためのお薬としては「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」や「瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)」「天王補心丹(てんのうほしんたん)」などを症状に応じて服用されると良いでしょう。
また更年期障害は「肝」の乱れに伴う症状も多く、その場合には「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」を併用した方が、症状を速やかに抑えるためには有効です。
なお、更年期は女性特有のものではありません。男性にも更年期があることは知られており、やはり様々な症状が起こるケースがあります。この場合も原則として対処は同一であり「腎」を補っていきます。
中医学では女性は7の倍数で変化するとされます。そして49歳が節目となり、この年齢を境にして大きな変化が起こると考えます。しかしこの節目は誰しも通る場所です。その変化をスムーズに行えば更年期も穏やかに過ごすことが出来るのです。予防のためには何より「腎」。早め早めにそのケアを考えていきましょう。