耳鳴りは漢方の需要の多い疾患の一つです。これは裏を返せば西洋医学での対処が難しい病気であることを表しているとも言えるでしょう。耳鳴りのように数値として捉えられず、客観的な判断が難しく、当人の”感覚”でしか分からない疾患には、西洋医学はまだまだ対応できない状況があるようです。耳鳴りは悩んでいる人が非常に多い疾患であるにもかかわらず、有効な治療法が確立されていない理由は、そこにあるように感じます。
さて耳鳴りについて西洋医学では内耳や中枢に原因がある可能性が高いとされています。突発性難聴やメニエール病などに伴って起こる耳鳴りの場合は、その原因疾患を治療することで耳鳴りも収まることも多いでしょう。しかし慢性の耳鳴りは、老人性の難聴が並行して起こっているケースが多いため、根本的な治療法はないとされます。
メチコバール(ビタミンB12)などの他、アデホスなどの脳血流改善薬、場合によっては抗不安薬などの薬を処方されることもあると思いますが、症状の改善につながることは多くありません。時として「年だからしょうがないね」とはっきり言う病院の先生もいるようです。
漢方での耳鳴りの治療も決して簡単ではありませんが、長い間研究されてきた実績があります。耳は五臓の中の”腎”と関係があるため、まずはそのバランスの崩れを考えますが、その他の肝・心・脾・肺の不調でも耳鳴りは起こるとされます。よって体の崩れが複雑になっているケースも多々ありますので、その見極めをしっかりと行うことが非常に大事になります。逆にいえば、その見極めが出来れば、容易に症状が改善するケースもあるのです。
先に述べたように、耳鳴りの基本は”腎”の治療となります。特に高齢で、聴力の減退も進み、不眠なども伴うケースは、まず”腎”の衰えを考えます。よって「補腎薬」と呼ばれる漢方薬が適用となり、その代表的な処方としては「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」があります。
しかしこの処方だけで耳鳴りが改善するケースはそれほど多くないでしょう。
例えば、50代ぐらいで、耳鳴りの音がキーンと高く、ストレスが多いタイプの方は「肝」の問題を考えます。この場合には「瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)」や「加味逍遥散(かみしょうようさん)」などが適するケースとなるでしょう。
さらには年齢は若いが疲労感が強く、立ちくらみがあったり、軟便傾向の方は「脾」の問題があるかもしれません。このような時には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などを使っていくべきでしょう。
耳鳴りは他人には分かりにくいのですが、本当に煩わしく、生活の質に大きく影響します。しかし、いろいろな情報に惑わされずに適切な漢方薬を根気強く飲めば、必ずや改善の糸口が見えてくるはずです。ぜひ漢方を試してみて下さいね。
耳鳴りと漢方
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