のどがいがらっぽくなる「エヘン虫」。私と同世代、40代より上の方であれば「エヘン虫」を知っていると思います。調べてみると、大正製薬の「ヴイックス ドロップ」のキャラクターとのこと。ノドに「エヘン虫」がまとわりつくコマーシャルがあったのだと記憶しています。ノドのイガイガがあると、「エヘン」という咳が出ることが多く、何となく虫がいついているような感覚もありますので、とても良いネーミングですよね。もちろん本当に虫がいる訳ではありません。
さて、その「エヘン虫」は令和となった今でも私たちを悩ませています。正式な病名では無いのですが、当店でも「エヘン虫がいる」と相談をされる方は時々いらっしゃいます。耳鼻咽喉科に行けば、咽頭炎や逆流性食道炎などの他、アレルギーと診断されるケースもあるのではないでしょうか。それぞれ対処法はありますが、エヘン虫に対してはこれといった明確な治療方針はありません。特に慢性化している場合には、西洋医学的な対策は取りにくいと考えられます。
このような時には漢方の出番です。エヘン虫の退治、すなわち慢性的な気になるノドの違和感を体質から治していくことを検討してください。
具体的には、エヘン虫は「肺」の弱さから生じた症状と考えられます。「肺」は呼吸器全般であり、もともとの体質的な弱さがある方もいれば、年齢とともに弱くなる傾向もあります。もちろんタバコや空気の悪い環境の他、過労や睡眠不足なども「肺」を攻撃する要因です。この「肺」の「陰(潤い)」が不足することによって、粘膜が過敏となり、エヘン虫症状につながっていると考えられます。
よって、「肺」の「陰」を補う「八仙丸(はっせんがん)」などの漢方薬を長い目で見て服用することで、「肺」の状態を改善し、エヘン虫が住みにくい環境を整えることにつながります。
似た考え方で「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」も、「肺」の「気」を高めて粘膜を強化し、エヘン虫を寄せつけないノドを作り出すために役立ちます。
さらには、乾燥を和らげる作用を持つ「白龍散(はくりゅうさん)」は、より短期的にノドのスッキリ感をもたらしてくれる可能性があります。
一方で、エヘン虫を直接退治するような、短期的な視点でのお薬としては「天津感冒片(てんしんかんぼうへん)」が挙げられます。「天津感冒片」には炎症を鎮める作用がありますので、とにかく急いでエヘン虫症状を和らげたい場合の候補となります。
このようにエヘン虫に対する漢方薬は数多く考えられますが、その方の体質や症状を総合的に判断して、服用するお薬を決めるべきです。エヘン虫をしっかりと、根本から退治するためにも、漢方の専門家にしっかりと相談して対策を立ててみて下さいね。