手根管症候群は、手根管部位を通る神経が圧迫されることによって引き起こされるしびれや痛みを主とする症状全般を指します。症状は夜間早朝、手を使うときに悪化して、手を振ることで軽快します。
手根管は、手首の上側にあるトンネルのような部位で、ここがむくむなどして神経障害が起こることが主な原因のようですが、その不具合の根本原因は明らかになっていません。腱鞘炎や糖尿病、妊娠や甲状腺機能低下など様々な要因がきっかけとなることが多いとされます。
なお更年期の女性に発症することが多いことから、ホルモンの関与も考えられます。

手根管症候群の病院での薬物治療は確立された方法がありません。ステロイドによって炎症を鎮めたり、鎮痛薬やビタミン剤(B12)などが用いられることもあるようですが、一時的によくなっても根本解決はできません。もちろん何もしなくとも症状が良くなっていくこともあります。
症状がひどい場合には手術も選択されますが、抵抗がある方も多いと思われます。
このような場合に選択肢と考えていただきたいのが漢方薬です。痛みが起こっている原因は必ずどこかにあると考えるのが漢方の理論。痛みはとても辛いものですから、お困りの方はぜひご検討ください。

さて漢方的に手根管症候群を考えると、「詰まり」による症状であることから「お血」が原因に他なりません。痛みもしびれも「お血」の典型的な症状ですし、夜間に症状が悪化するという点も「お血」の特徴の一つです。
また、更年期に発症しやすいという点も、生理による出口がなくなり「お血」が生じやすくなったためという説明で納得できます。妊娠中も「お血」は悪化しやすいとされます。
もう一点原因を考えるのであれば、「水湿」でしょうか。不要な水分の存在が「詰まり」を生じさせ、「お血」につながっていることも考えられます。

以上より、手根管症候群には、「お血」を改善する力のもっともすぐれた「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」が最も合うことが多いと思われます。その他では疲労がある場合には蟻製剤である「イーパオ」、「水湿」が強い場合には「五苓散」なども候補となります。
いずれにしても、同じ手根管症候群であっても、人それぞれ体質は異なるため、漢方的な診立てが大事になります。まずは専門家の相談を受けるようにしましょう。

≪参考資料:今日の治療指針(医学書院)≫