最近ネット上で目にすることが増えた「気象病」。気圧が急激に下がる時や、気温の変化が激しい時に生じる、頭痛、倦怠感、気分の落ち込みなどの症状を指すようです。私が子どもの頃も「台風の前には古傷が痛む」などの話を聞いたことがありますし、昔からよく知られている現象ではあると思います。しかし医学的に診断されるような病気では無く、「気象病」という名前も医学の教科書に載っていません。しばらくすると症状が落ち着くため、病院を受診することもほとんどないのではないでしょうか。

「気象病」は発症をある程度予測できるとはいえ、本人にとっては辛いことに変わりありません。痛みについては、短期的には鎮痛剤で対策が可能であったとしても、根本解決にはつながりませんので、天気に左右される日々が続いてしまいます。

そこで漢方の出番となります。ネットでは「気象病」には「五苓散」が良いという記載を見かけますが、私は正しいとは思いません。「五苓散」は「水湿」を除く作用を持つ処方であり、むくみや下痢などに用いることが多いです。確かに低気圧が近づくと湿度が高まり、「水湿」が体内に溜まりやすくなります。しかしながら、「水湿」が関係していないケースも多く、「気象病」のすべての方に「五苓散」が合うわけでは無いのです。また「五苓散」は基本的には体の下部の不要水分を除くことを得意とするお薬であり、頭痛にはあまり使われません。精神面の症状も然りです。

では「気象病」を引き起こす本質は何かと言えば「衛気不足」であると私は考えています。「衛気」は体を守る力であり、外からの刺激をはね返す役割があります。この「衛気」が足りないと、気圧でも気温でも体の外で起こった変化に対して影響を受けやすくなります。すなわち「衛気」は体の「対応力」とも言えます。
本来、人の体は、多少の気圧の変化や気温の変化には順応できます。しかし「衛気」が弱く、「対応力」が不足していると、その影響を受け、体調を崩してしまうのです。
よって、「気象病」を根本から治すためには、「衛気」を高める「玉屏風散」という処方をお勧めします。「玉屏風散」で「対応力」を高めることで、環境の変化があっても体は不調をきたしにくくなっていきます。

しかしながら、一口に「気象病」と言っても、その症状は様々ですし、人それぞれのもともと持っている体質は異なります。頭痛がひどいのか、精神面の問題が大きいのか、などによっても服用すべき漢方は変わってきます。「気象病」でお困りの方は、ぜひ漢方の専門家に見立ててもらい、もっとも自分に合った、自分の体に必要なお薬を服用するようにしましょう。