変形性膝関節症は、軟骨の変性や摩耗が原因で、ヒザが変形し、水が溜まったり痛みを生じる疾患です。中高年の女性に多い疾患とされます。
変形性膝関節症の主な原因は加齢ですが、肥満やスポーツ、職業歴とも関係があるとします。医学的には、痛みに対しロキソニンなどの鎮痛剤が用いられますが、対症療法であり、歩行困難など重度の場合には手術が選択されます。
しかしながら、薬が合わない、手術には抵抗があるという方も多いでしょう。そのような場合には漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。また、状態が初期段階でこれ以上の悪化を防ぎたいという場合にも漢方は有効な手段と考えます。
さて、変形性膝関節症の漢方的な考え方ですが、軟骨がすり減ることが大きな要因であり、加齢とも関係があることから、「腎虚」が原因の一つと考えます。「腎」は生命力と関係する臓であり、年齢とともに弱くなっていきます。また骨とも関係し、「腎虚」は骨を弱くするとします。そして変形性膝関節症は骨の潤滑が不足した状態であり、漢方の考え方では「腎」の中でも「陰」の不足と捉えます。「腎陰」不足であれば、ヒザだけでなく腰も弱かったり、ほてり、不眠などを伴うことも多いでしょう。
もう一点、水が溜まることが多いことから「痰湿」と呼ばれる不要水分の関与も疑います。前述したように必要な潤いは足りていないのですが、体に悪さをする不要な水分は存在している状態です。この場合は、むくみがあったり、体が重だるかったりすることが多いとされます。
以上より、変形性膝関節症には、「腎陰」を補う漢方である「亀板製剤」、「痰湿」を除く「防已黄耆湯」などが合うケースが多いと考えます。その他、「腎」を補いながら痛み対策も出来る「蟻製剤」や「蛇製剤」なども候補となります。また、血行不良が関与していることあり、その場合には、「冠元顆粒」や「疎経活血湯」などを使う場合もあるでしょう。
もちろん、同じ変形性膝関節症であっても、漢方・中医学の診立ては人それぞれ異なります。上記の漢方がピッタリの場合もあれば、他の処方が良い場合も多々あります。体質にもっとも適した漢方薬を使用していく必要がありますので、詳しくは専門家にご相談ください。
≪参考HP: 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html≫
≪参考図書: l今日の治療指針(医学書院)≫