世界には様々な人種の人々が暮らしています。もちろん「人類皆兄弟」ですから、体や健康面で大きな違いがあるわけではありません。とは言っても、西洋医学的には人種によって発症に偏りのある病気も多いことが知られています。

さて漢方の話ですが、その理論が作られた時代は、世界的な交流が多かったわけではないため、原則は中国人の体質に即した内容となっているように感じられます。しかしながら、中国は広大で様々な気候があることから、地域特有の病気も知られていました。中医学には人を診るときに地域性を考慮すべきという原則があり、「因地制宜」と言われます。前述の人種の違いによる病気発症の差異をある程度認識していたとも考えられます。

ということで日本人の特徴ですが、胃腸が弱い、という体質を持つようです。これは以下の二つの理由が考えられます。

1)海に囲まれて湿度が高い
日本は島国であり、特に夏場は湿度が高い傾向にあります。「湿邪」は「脾」すなわち消化器官に影響し、その動きを悪くすると考えます。そのために全般的に胃腸が弱い日本人が多くなっている可能性が考えられます。

2)生ものをよく食べる習慣
日本人の好物として上位に入るであろう「寿司」。お刺身を含めて生のお魚は美味しいのですが、これまた「湿邪」を体内に運んできます。1)と同様の理由で、胃腸に負担をかけていると言えそうです。

確かに欧米人はお肉をがっつり食べるイメージがありますが、体が大きいためでなく、胃腸が強いことが理由の一つでしょう。また油が多い中華料理も、中国人にとっては普通のようですね。

では胃腸が弱い日本人はどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?以前もコラムで書いたことがありますが、以下のような点を頭に入れておきましょう。

1)食べ過ぎないこと
胃腸が弱い=キャパが小さいとも言えます。腹八分目を心がけたいですね。

2)冷たいもの、生ものを食べ過ぎないこと
上述した生魚の他、野菜サラダ、冷たい飲み物には気を付けましょう。飲み物はせめて体温より温かいものを。

3)漢方薬を飲むこと
漢方薬は根本的に胃腸機能を高める効果が期待できます。胃腸トラブルが多い方は、その場しのぎではなく、長い目で見ての体質改善を試みましょう。

その他、よくかむこと、温かいスープから先に食べること、おやつなどを控えて胃腸を休ませる時間を作ること、なども大切です。
いずれにしても日本人の胃腸は弱い、ということを自覚して、今は特にトラブルがない方も、お腹を労わって過ごすようにしましょう。