2022年現在、コロナ禍のため、体温測定をする機会が異常に増えています。怪しい機械も多く、形式的な印象はぬぐえませんが…体は全く元気いっぱいなのに37.5度などの目安を超えると施設に入場できないとなると困ってしまいますよね。また、園や学校などでも体温が上がると登校できなくなったり、帰宅を促さられることもあるでしょう。今は体温に非常に敏感な世の中になっています。

そもそも人間の体温はなぜ37度なのでしょうか。この明確な理由は不明です。しかし、生体機能を維持するためには、体の成分であるタンパク質が心地よく存在し、酵素等によって体を動かすために必要なエネルギーを効率よく産生して、老廃物を除去していく必要があります。この過程において最適な温度が37度なのでしょう。
そして人間は細菌やウイルス等に感染すると、発熱をします。これは正常な生体防御反応であり、この熱によって、ウイルスや細菌が増殖する働きを弱めようとしているとされます。人間の細胞自体は体温が41度までは影響が無いとされますので、それまではあまり解熱しない方が良いと考えられます。

さて、もともと体温が高い、高体温症の方がいらっしゃることは知られています。「機能性高体温症」と呼ばれ、炎症など体温を上げる原因が明確に無いにも関わらず、場合によっては38度~40度といった体温上昇を認めます。ちなみに「機能性」とは、物質的な異常が見られない、という意味ですね(もっと平たく言えば目に見える原因が無い)。体温が低い、すなわち低体温は体に悪いイメージがあり昔から注目されることが多いように感じますが、高体温も体のバランスの崩れであることが多く、良いものではありません。頭痛や倦怠感、集中力低下などの症状を伴いこともあり、解熱薬が効かないことも多いです。しかし、現代医学は理由が定かではない症状に対しては非常に弱い側面があり、明確な対処方法がありません。このような時こそ漢方の出番です。

漢方の考えで高体温症は体内に「熱」があると考えてまず間違いありません。そして大部分は「虚熱」と思われます。「虚熱」とは、体を冷ます「陰」が足りずに発生している「熱」のこと。冷ます力が足りないのです。
この場合の対策は明確で「陰」を補うこと。「陰」が十分にあれば「熱」を抑えてくれるのです。代表的な「陰」を補う「補陰薬」には「山薬」「枸杞子」「亀板」などがありますが、場合によっては「清熱薬」と呼ばれる積極的に「熱」を鎮める生薬も必要と考えます。また精神的な要素が関係していることも多く、その場合はさらに一工夫が必要です。よって、この漢方薬を飲めば必ず体温が下がる、という訳ではありません。体質を見極めるために、お困りの方は漢方の専門家にご相談することをおススメします。

ちなみに、子どもは体温が高い傾向にあることが知られますし、生理がある女性は基礎体温が生理周期後半には0.5度程度上がります。多少、平熱が高い低いは個性とも言えます。
また「緊張」があると体は興奮状態、亢進状態となり、体温は上昇します。あまり神経質になり過ぎずに高体温体質の改善を目指してみて下さいね。

≪参考文献:「Clinical Aspects of Functional Hyperthermia」Junwa Kunimatsu,Jpn J Psychosom Med60:227-233, 2020≫