バルトリン腺は女性の膣口の両方にある器官で、性交時に必要な潤滑液を分泌します。このバルトリン腺が、細菌感染等が原因で詰まってしまうと、嚢胞を形成することがあります。女性の約2%に生じると言われ、20代で起こりやすく、加齢とともにその発生は低下します。
嚢胞は粘液が含まれた袋ですから、痛みは通常ありません。しかし、ゴルフボールほどの大きさになることがあり、そうなれば歩行や座る時に影響が出ます。また、化膿菌が感染することで、炎症が生じ、膿瘍が出来ることがあります。これは「うみ」のような状態ですから、痛みや熱感を感じ、不快感を招きます。

バルトリン腺膿疱の医学的対処は原則として抗生物質となります。しかし、自然と治っていくことも多い病気であり、経過観察を指示されることもあるでしょう。
ただし、再発しやすい病気であり、抗生物質の服用や診察に抵抗があるという方も多いと思います。その場合には、漢方薬という手段もあるのではないでしょうか。

中医学・漢方の理論でバルトリン腺膿疱を考えると、基本的に不要な水が溜まることが原因であるため、症状が生じている急性期には「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「五行草(ごぎょうそう)」などの不要水分を除く作用を持つ漢方が適します。また炎症があると思われる時には「熱」を除く必要がありますが、これらの漢方は「熱」除去の効果もあるため有用です。ちなみに、上記の漢方は陰部の細菌感染全般にも適応することが多いです。
一方で再発を繰り返す方は、免疫を高めること、及び不要な水が溜まりやすい体質の改善を目指すと良いと考えます。粘膜の強化を図ることが出来る「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」が候補ですが、なぜ免疫が落ちやすいのか、なぜ水か溜まりやすいのか、その中医学的な原因を探ることが大切です。
なお一般的には不要な水分「水湿」を貯めやすい食べ物である、ケーキなど甘いもの、コーヒーや炭酸飲料、アイスクリームなど冷たいもの、生野菜や刺身を含む生ものは控えめにした方が良いと考えます。

バルトリン腺に関する症状は不快なもの。根本的な体質改善を目指し、漢方薬の服用をどうぞご検討ください。

≪参考文献:今日の治療指針(医学書院)≫