女性が妊娠する力は、20代前半をピークとして、20代後半からゆるやかに下降していきます。妊娠する力、すなわち妊娠力を年齢別に見た率は専門的には妊孕率(にんようりつ)と呼ばれます。下記の図は一般社団法人日本生殖医学会ホームページのデータを参考としたものです。20代後半の妊孕率低下は大きくはありませんが、30歳を過ぎると明確に妊娠の率は下がり、35歳からは顕著となって、40歳を過ぎると大きな差が生じます。

http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa22.html

現在世の中は平均寿命が伸び、男性、女性とも発育が早くなっていますが、妊孕率については昔と変化が無いと考えられています。これは、卵子の元となる細胞は女性が出生する時に既に体内に存在し、その老化は時間経過と比例しているという原則が変わっていないことを意味します。昔と今で寿命が伸びた要因は、衛生環境や栄養面の改善・医学の進歩によると考えられますが、その変化は残念ながら卵子の老化を止めるためには役立ってはいないのですね。

このような事実を「知らなかった」という、不妊治療中の女性は非常に多いです。今は晩婚となっていて、女性の初婚年齢も30歳に近づいています。漠然と「将来子どもが欲しい」と考えていて、気づいたら30代、すでに妊娠の力が落ちてきている時期です。
どうしても望まない妊娠を避けるために中学生、高校生は避妊の重要性を勉強しますが、この妊孕率の低下についても、ぜひ多くの女性に知って頂きたいなあと感じます。少子化対策の必要性が言われていますが、このような知識の啓蒙も大事ですよね。

さて、加齢による、妊娠力の低下について、中医学での考え方にも触れておきます。

腎虚(加齢による生命力・生殖力の衰え)
腎の力は、加齢のほか、睡眠不足、過労、性生活過多などによって、減退すると考えます。

血虚(「血」の不足)
無理なダイエットや栄養不足、生理時の体の酷使、目の使い過ぎなども「血」を消耗する要因です。

お血(「血」の流れの不良)
加齢のほか、運動不足、ストレスなどが「血」の流れを徐々に悪くしていきます。

ケースバイケースではあるのですが、上記のような要因が加齢とともに妊娠力が低下する主な要因であると考えられます。車や機械と同じように、人間の体も日々酷使していると自ずと不具合が出てきてしまうのですよね。しかし、体を労わって過ごすことでその体の不具合の発生を抑えることが出来ます。その養生の考え方がある中医学を活用しない手はありません。
若い時はどうしても体を無理しがちで、また無理もできてしまうのですが、このような考え方を早くに理解し、妊孕性を可能な限り長く維持できるように努めて頂くと良いですね。