現在様々な問題を引き起こしている新型コロナウイルス感染症。治療薬やワクチンがなく対処方法も明確でないということで、多くの方が不安を抱えています。しかし、悪性度が高いという印象がありますが、たとえば結核は世界で1年間に160万人の方が亡くなっていて、日本人も2000人を超える死者となっています。肺炎は今でも十分怖い病気であり、新型コロナウイルスだけが特別ではないという点は理解しておくべきと思います。
そして「カゼに対する薬が開発出来たらノーベル賞もの」とよく言われるように、変異しやすいコロナウイルスの特性を考えると、画期的な治療薬や、感染を確実に防ぐワクチンの開発も、残念ながら可能性は低いのが現状です。出来たとしてもインフルエンザに対する薬(発症期間を1、2日短くする)やワクチン(有効率50%程度)ほどの効果となるように感じます。
となれば、結局のところ自分の免疫力を高めることが一番。栄養面や衛生面で昔より優れている今の日本では、免疫力を高い状態で保つことはそれほど難しいことではありません。感染症に関わらず、病気を予防するには免疫力で体を守ることが大前提なのです。それでも感染症にかかったり、病気になることは人間は避けられません。しかし病気を治すのも薬ではなく、自分の体、免疫力が基本であることを理解していくことも必要です。
それでは免疫力を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。今の医学に予防のための薬はありません。よって中医学の出番になります。
中医学には「衛気」という概念があります。「衛気」は体を守る力であり、防御力を担う「気」。すなわち免疫力に他なりません。この「衛気」を高める作用を持つ処方が知られており、その処方を服用することで、「邪気」の侵入を防ぐことが期待できます。
その「衛気」を高める目的でもっとも広く使われている処方が「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」。「黄耆」「白朮」「防風」という3つの生薬から成るシンプルな処方ですが、計算尽くされた素晴らしい漢方薬なのです。主役は「黄耆」で、「肺」を中心にして、体の防衛の最前線である粘膜の強化を図ります。薬理実験では、抗体の産生を促す作用や、鼻や気管支の粘膜保護作用も知られており、「免疫力」を高める頼れる処方となっています。ちなみに「玉屏風散」は「衛益顆粒」という商品として販売されています。
しかしながら、「衛気」を保つだけでなく、体のバランスを正常に維持することも免疫力を高める基本的な方法となります。たとえば血流の悪い「お血」体質の方は、血行を良くするための養生や漢方薬服用が結果として免疫力を高めることにつながりますし、極端な冷え性の方は「陽虚」である可能性が高く、その場合は体を強く温めることが、免疫力アップに大切な要素となるのです。
すなわち、免疫力強化の方法は人それぞれであるとも言えます。これを食べれば万全とか、この健康食品を飲んでいれば問題ないなどということは決してありません。各人それぞれの免疫力対策を見つけることが大切です。
最後に免疫力強化の養生法を下記に記してみました。逆にこれらを守ることが出来なければ、リスクが高まるため、漢方薬服用などの積極的な対策を考えていく必要があります。とはいえ、どれも当たり前のことではあるのですが、すべて実践することは簡単ではありません。頭に入れつつ、無理なく生活に取り入れてみましょう。
◎早寝早起きを心がけ、睡眠不足とならないようにする
◎ストレス発散を行う
◎適度な運動を行う
◎バランスの取れた食生活
◎過労や激しい運動、無理な性生活をしない
免疫力強化は、「未病先防」をかかげる中医学の真髄ともいえる部分かもしれません。これからどのような感染症が流行しようとも、ずっと有効な考え方です。どなたも健康長寿のために、免疫力強化を心がけ下さいね。